Friday, July 13, 2007

<イチロー>マリナーズと5年契約 年俸総額約109億

2007年7月14日 (土) 10:51 毎日新聞

米大リーグ、シアトル・マリナーズは13日、イチロー外野手(33)=本名・鈴木一朗=と5年契約を結んだと発表した。AP通信によると、年俸総額は9000万ドル(約109億8000万円)で、総額、年平均ともに日本選手史上最高となった。今季が4年総額4400万ドルの契約最終年にあたり、去就が日米で大きな関心を集めてきた。
 イチローの1年平均の年俸は1800万ドル(約21億9000万円)となり、これまでの日本人選手最高だった松井秀喜外野手(ヤンキース)の1300万ドル(約15億8000万円)を抜いた。大リーグの今季最高年俸はアレックス・ロドリゲス内野手(ヤンキース)の2771万ドル(約33億8000万円)。
 イチローはメジャー1年目の01年に首位打者を獲得。04年には大リーグシーズン最多の262安打を記録。7年連続出場を果たした今年のオールスター戦では、日本人初のMVPに輝いた。
 ◇イチローの「革命性」、改めて浮き彫りに
 イチローが5年総額9000万ドル(約109億8000万円)でマリナーズに残留することが13日、決まった。破格の待遇は、球団経営におけるイチローの重要性を示すとともに、メジャーの常識をことごとく覆してきたイチロー独自の存在価値を、金銭面で裏付ける形となった。
 「マリナーズは、いしずえを失わずにすんだ」。AP通信は、イチローのマリナーズ残留をそう表現した。1年平均の年俸1800万ドルは、AP通信が4月に報じた今季の選手年俸ランクに当てはめると、ロドリゲス、ジアンビ、ジーターのヤンキース勢に続く額。マリナーズの経営にかかわる任天堂グループは、それに見合う看板選手という位置づけをしたとみられる。
 さらに5年という長期契約について、マリナーズのバベシ・ゼネラルマネジャーは「我々の目標はイチローに生涯シアトルでプレーしてもらうこと。今回の契約はそれに向けた大きなステップとなった」と語った。FA制の導入以後、一つのチームに生涯とどまることはまれになっているが、イチローが39歳になる2012年までの契約を結んだことで、その可能性は高まった。
 ロドリゲスに代表されるように高額年俸は長距離打者が多いが、イチローはリードオフマンとして破格の待遇を受ける。04年にシーズン最多の262安打をマークし、今年の球宴では史上初のランニング・ホームラン。メジャー1年目から、スピードと卓越した技術で、パワー全盛だったメジャーに衝撃を与え続けてきたイチローの「革命性」が、改めて浮き彫りになった。

残ってくれ、来年も」の声が重かった イチローの一問一答

イチロー外野手が、シアトル・マリナーズと2012年まで正式に契約を延長した。以下は、当地で行われた記者会見の内容。

——いつ決めたのか?
「いつという、この日はないんですけども、このシーズンが始まって、いろんな遠征にいくわけですけど、その時に、アウエーのファンがビジターの僕に対して、『来年は、うちのチームに来てくれ』と、言ってくれたんですね。正直、心が動いた時期もありました。日本のファンからは、日本に戻ってきてくれと、たくさん聞きました。でも最終的には、遠征から帰ってきて、『シアトルに残ってくれ、来年も』というその声が、僕にとっては一番重かった。これが一番の理由だと思います」

——マリナーズで引退を考えているか?
「ひとつのチームでプレーするということは、なかなかたくさんのプレーヤーができるわけではないと思うんですね。その可能性、チャンスを与えてくれたことに、感謝していますし、向こう5年半、思いっきりやって、5年契約の後の10年(契約)を勝ち取りたいと思ってます」

——契約問題の煩わしさが消えたか?
「キャンプの初日に、フリーエージェントに関しては、今日だけにしてくれと言ってきたんですけども、そのことが7月に入ってから、またちょっと騒がしくなってきて、これがすべて終わったと思うと、契約したことと同じくらい、うれしいですね」

——誰が一番影響を与えたか?
「一弓ですね」

——なんて?
「ワンワンワン言ってた」

——チームの方向性については?
「今の状況というのは、(優勝を)十分考えられる。僕たちのポテンシャルを考えれば、十分考えられる成績ですし、この2、3年、苦労してきたチームが、ようやく実り始めた、というふうに感じています。この5年というのは、十分に可能性のあるチームで居続けることができると、僕は思ってます」

——チームメートなど、周りの人がどんな影響を与えたか?
「チームメートに、自分が考えている野球に対する考え方とか物事に対する価値観が全く伝わらないというのはつらいものですが、幸いにしてこのチームには、何人かその価値観を共有できる人たちがいるので、そのことは確かに僕にとって大きな助けになった」

——5年後がイメージできる?
「パフォーマンスに関してはもちろん、その自信がありますし、見た目もこのままでいたい。急にアロハシャツとか着出したら、ちょっと、ここに染まった証になりますから、それは避けたい。まあ、DH(指名打者)にはなりたくない」

——トニー・グウィン、カル・リプケン(いずれも、ひとつの球団でキャリアをまっとうし、今年野球殿堂入りする名プレーヤー)らをどう考えているか?
「そういう選手の方が、少ないですからね、アメリカでは。日本だと、外に出ることの方が難しい、というか、珍しいことですよね。ここでは全く逆なんで、茶髪の増えた中で、黒髪がすごくきれいに見えたり、すごくかっこよく見える」

——評価について、どう考えているか?
「ひとりの選手に対して、これだけの評価を与えてくることは、それを示している。この評価って、年俸が500万円だとしたら、弥生時代からプレーしないと、達成できない数字なので、その評価ってすごいと思うんですよ。1000万でも、多分平安時代ぐらいですから、このことが、僕にとっては、個人としてはね、気持ちを表してくれた。チームの意識も、勝っていくことによって変わってきている。動きも変わってきている。このことを実感できたことが大きかった」

——自分で選ぶ体験というのは?
「想像通りでしたね。流れに任す方が、よっぽど楽だなあと想像してましたし、その通りだった。力のいることだった。ただまあ、そういう選べる立場にいることは、選手として、すごく幸せなことなんで、そうやって、6年半、自分をプレーヤーとして高めてこられたことには満足してます」

——苦しさは?
「遠征先のベットに入ったときにも、考えることってあるんですよ。この街に来たらどうなるかとか。それは、できればない方がいいですから」