Friday, September 22, 2006

2百安打と並ぶ目標達成 イチロー「しんどい宿命」

by 共同通信社
 ふと漏らした「しんどいです」は、今の偽らざる心境だ。6年連続100得点に届いたイチローの表情は、200安打と並んで口にする目標を達成した安堵(あんど)感と、今後にかかる重圧への心配が入り交じっているように見えた。「それはもう、宿命ですよ。そういう意味では、自分で自分の首を絞めている。しょうがない」 実績を積み重ねるほど高まる周囲の期待。2004年ごろからは、自分でも、続いているものを途切れさせたくない、という色気を意識するという。しかも100得点は、後続打者の援護なしでは難しい。さまざまな理由が複雑な表情の背景にある。 昨年まで5年続けた打率3割と200安打、100得点、30盗塁、球宴出場、ゴールドグラブ賞のうち、4つをことしも達成した。今季の打率3割はほぼ確定的で、オフに選出されるゴールドグラブも6シーズン連続受賞が濃厚である。「なかなか簡単にはいかない」の言葉に、万感がこもる。前例のない複合連続記録に伴う栄誉と苦しさ。イチローだけが受ける特権か。(シカゴ共同)

Sunday, September 17, 2006

イチロー、工夫積み重ね


by 共同通信社

 今季から同僚となった城島は、イチローが遠征先で、あるチェーン店のピザを食べ続けることに驚いたという。「6年間、昼食はいつも決まった店でチーズしか乗ってないピザ。毎日、同じ味のものを同じ量だけ食べるのは、習慣や準備の究極の形だと思う」

 実際には、昼食を違うもので済ますこともある。だがその場合でも、通うレストランと注文の品はほぼ同じ。体調はもちろん、感情や生活リズムの揺れ幅を最 小限に抑えるのが狙いだ。イチローは、そんな小さな努力や工夫を無数に積み重ねてきた。7年連続200安打のボッグス(レッドソックスなど)も、試合前に は必ず鶏肉料理を食べることで知られていた。

何度やっても強くなれない イチロー


by 共同通信社

 1年に1度だけ、心からリラックスできる日か。6年連続200安打を達成したイチローは、正直に胸のうちを語った。

 -200安打に今季大リーグ一番乗り。自身の過去5度と比べても2004年、2001年に次ぐ早さだったが。
「僕はもう、200が達成できればそれでよかった」

 -200安打を何度も重ねて思うこと。
「何回やっても強い自分にはなれていない。むしろ弱さしか見えてこない。やる度に自分の強さを感じるなら、周りから“やって当然”と思われるのも当たり前かもしれないが、実際は全く逆です」

 -チーム状態は目標達成に影響するか。
「分かりません。ただ、いつでも負けているチームにいるから難しいということもないし、負けているから簡単になることもないと思う。いつでも重圧しかない」

 -今年、自分をどう支えようと。
「感情を抑えた。それ(感情)を出したら自分が壊れると思ったので、ギリギリのところで出していない」

 -来年のことはもう考えるのか。
「毎年、この時期は、今年できたら来年はできなくてもいい、と思いながらやっている。そうやって毎年(200安打を)クリアしてきているので、今はとても先のことは考えられないですよ」(カンザスシティー共同)

重圧と戦い続けるイチロー 弱み、人間くささも

by 共同通信社

 どんなときも、何をやっても-。重圧という言葉は、まるでイチローのためにあるかのようだ。「WBCに出ることで公式戦が駄目だったらそれまでの選手だった、ということ。しっかりできると思うから、出る」。そんな決意を語ったのは、王ジャパンの福岡合宿を控えた2月だった。

 あれから約7カ月。「ああ言ったからにはやらないと、という気持ちはあった。それを示せてよかったと思う」。そう言える自分に少しだけ安堵(あんど)しながらも、既に次の重圧と戦っている。9回2死二塁でカウント2-1から左翼線適時二塁打。そこでは、節目の試合で最後の打者になりたくなかった重圧なのか。その問いを否定し、イチローは言った。

「あそこは201本目を打ちたい。そう自分にプレッシャーをかけていた」。202本目のしんどさもこれまでと同じか、それ以上か。

 めげそうになる自分へのカンフル剤として聴くロックバンドがある。「ザ・ブルーハーツ」。3月、WBCの2次リーグで絶体絶命に追い込まれた直後にさえ “封印”していたCDを、約1カ月前に取り出している。200安打を積み重ねるほど「むしろ自分の弱さしか見えてこない」と、イチローは認めた。重圧をはねのけるほど、人間くさくなっていく。(カンザスシティー共同)