Monday, September 10, 2007

イチロー、100得点で「オンリー・ワン」の存在に

2007年9月10日 (月) 9:47 MAJOR.JP

 さて、初回にホームを踏んだイチローは、今季100得点を記録した。シーズンで「200安打、100得点、30盗塁」を記録したのはこれで7度目だが、イチローはこの日、“オンリー・ワン”になっている。

 これまで、球聖と呼ばれたタイ・カッブ(元タイガース)と、ウィーリー・キーラー(元オリオールズほか)が、「200安打、100得点、30盗塁」を6度記録しており、イチローも去年、彼らに並んだが、この日の得点でイチローは彼らを超えたことになる。

 その感想を問えば、イチローは言った。

「まあ、1個片付いた、という感じだね」

“1個”とは、これからまだまだ、記録を塗り替えていきますよ、という意思表示だろうが、そんなカッブやキーラーを現代に蘇らせるような行為に快感を覚えるかと聞けば、「まあでも、最近の記録——僕が関わる記録って、そんなんばっかだから、『またか』っていう感じだね」と、何気なさを装った。

 本心か? それは分からない。

 ただ、である。そのすごさを改めて考えれば、言葉がない。キーラーの記録も、カッブの記録も、一般的には打者有利と言われた時代のもの。その考え方には最近になって異論も出ているが、いずれにしても、もう破られないだろうと、逆に誰もが忘れていたような数字である。

 ジョージ・シスラー(元ブラウンズ=現オリオールズほか)の年間最多安打を破ったときもそう。イチローは、そういう人たちの名を身近にした点でも、その貢献がたたえられていい。

 そういえば、シスラーの記録を破ったとき、シスラーの家族の方が「イチローのおかげで、『ジョージ・シスラー』という名を、多くの人が思い出してくれてうれしい」と話していた。

 来年、イチローはキーラーが持つ、8年連続200安打に挑戦する。記録更新はまだ先だが、再びイチローは、キーラーという名を、表舞台に呼び寄せることになる。

イチロー、大台到達に進化の手応え「マイナスがゼロに」

2007年9月4日 (火) 8:01 MAJOR.JP


【ニューヨーク3日=丹羽政善】初回、イチローがいきなりロジャー・クレメンスからライト前ヒット。試合開始から5分も経っていなかった。リーチをかけて望んだ2打席目は、同点の3回。やはり先頭で打席に立つと、カウント0−2からの3球目をとらえ、打球を右中間スタンドの最前列に運んだ。

 打った瞬間の感想を、イチローはこう振り返る。

「この球場なら、という感じ。普通でいうなら、抜けてほしいと思うところだよね。ニューヨークだったって途中で思って…という感じかな」

 走りながら、悦に入る。

「しばらく出てないホームランがここで出るって、なんかあるよね。ちょっといい感じだなと思っちゃった。『おお、いい感じ、いい感じっ』って」

 試合展開の中でも大きな本塁打だった。9連敗中のマリナーズは、ワイルドカードを争っているヤンキースに先行を許す。2回に追いつき、先に勝ち越したいケース。イチローの本塁打は、ぐっと流れを引き寄せた。

 連敗中のチーム。雰囲気はやはり、「最悪だった」という。その中でも、ヒットを積み重ねる。イチローは言った。

「どんな状況でも、個人の仕事はやらなきゃいけない。そこで同じように数字を残すことっていうのは、マストですね」

 その中で見えて来たこと——。今年は200本達成前に、ニンマリとするような収穫を得ていた。

「170安打から190安打の間。それは、去年苦しんだ期間だったんですけど、そこを超えたいなあと思っていた。そこを強く意識してプレーして、超えた。そこを超えたことの方が、今回はうれしい」。

 過程では、技術的な手応えを感じたよう。ただそれは、「プラス」ではないと、逆説的に言った。

「これまでとは違う。少なくとも去年とは違う。マイナスがゼロになったという感じですね」

 昨年までは、達成が間近になると、邪念が生まれた。そこに惑わされ、苦しんだ。今年、そこが消えたがゆえに、「マイナスがゼロになった」という感覚が生まれたようだ。

 話を変化を必要とした技術的なことに戻せば、こう言っている。

「去年変えたことがあって、それを続けてくつもりだったんですけど、それがどうやら違ったんでね。シーズン中に変わっていたことです」

 具体的なことには触れぬも、自分だけが確信する感覚。それが首位打者奪回をも射程圏に入れた選手の自信とも映った。

 さて、記念ボールである。

 スタンドに飛び込んだことで、イチローも心配したよう。ただ、ヤンキースファンが、グラウンドに投げ返した。まず、それを拾ったライトのボビー・アブレイユは、そのボールの意味に気付いていないようだったが、セカンドのロビンソン・カノが、ボールを渡せと、必死にアピール。おそらく記録のことを知っていたカノは、それを三塁ベースコーチのカルロス・ガルシアに投げた。

 その過程までは見ていなかったというイチローだが、手にしたボールを見つめ、彼は安どした。

「ありがとう、ありがとうと思いました。でも時々、違うボールを投げる奴がいるから、それがちょっと怖かったけど」

 はて。今回の記録では、年間最多安打を打った時のように、シールが張られた特別なボールを使用したわけではない。

 それが、本物であると、証明できるわけではないけれど。

7年連続200安打 イチロー、一問一答

2007年9月4日 (火) 7:56 MAJOR.JP
【ニューヨーク3日=丹羽政善】シアトル・マリナーズのイチロー外野手が、ニューヨーク・ヤンキース戦でメジャー史上3人目となる7年連続の200安打を達成した。ここでは、試合後の会見を一問一答形式で紹介する。

——記録達成。率直な感想から。

「まあ、170本から190本の間——。それは、去年苦しんだ期間だったんですけど、僕は今年、そこを超えたいなあと思っていて、そこを強く意識してプレーして超えられたので、まあ、そのあとはスムーズにいくなあと思って、実際そうだった。それを超えたことの方がうれしいかな、今回は」

——本塁打を打った手応えは?

「この球場なら、という感じ。普通でいうなら、抜けてほしいと思うところだよね。ニューヨークだった、って途中で思って…という感じかな」

——クレメンスから打った。

「投げているボールは全然違うけど、まあ、名前がビッグネームなんで、いい記念にはなったね」

——走りながら感じたことは?

「しばらく出てないホームランがここで出るって、なんかあるよね。ちょっといい感じだなと思っちゃった。おお、いい感じ、いい感じって思ってた」

——ホームランボールがスタンドから返って来たが。

「ありがとう、ありがとうと思いました。投げろ、投げろって。でも時々、違うボールを投げる奴がいるから、それがちょっと怖かった」

——今年、技術的なヒントを手にしたのか?

「まあ、これまでとは違うでしょう。少なくとも去年とは全く違うし、ただ、プラスというより、マイナスがゼロになったという感じですけどね」

——どんな変化だったのか?

「去年変えたことがあって、それを続けてくつもりだったんですけど、それがどうやら違ったんでね。シーズン中に変わっていたことです」

——ウエード・ボッグスと肩を並べた。

「名前しか知らない。僕は実際見てないですから、とても軽いことは言えないですね」

——自分を代表する数字がいくつかあるかと思うが、それは200か262か?

「車のナンバーは262ですけどね、200ではないですね。そもそも、262は僕しかやってない。僕だけのものなんで」

——今年は、プレーオフ争いの中での達成となったが、過去3年と比べてどうか?

「9連敗のあとなんで、雰囲気は良くないけどね。むしろ、最悪でしたけどね。でも、どんな状況でも、個人の仕事はやらなきゃいけないと僕は考えてますから、今年も今までと違う状況が、現にあったわけですから、そこで同じように数字を残すことっていうのは、マストですね」

——まだ25試合あまり残しているが、やはりホッととした?

「あんまりしてない。でも、190にいったときに、ホッとした。ロードっていうのもある。ホームだったら違うかもしれない」

——7年、けがをしなかった。

「けがしてますよ、僕も。でも(試合に)出てるだけの話でね。まあ、使う側としたら、リスクのない選手でいたいよね。こうやって、この数字を続けている限りは、僕が試合に出たいと思うことは分かっているわけだから、特に契約した後って、使う側としたら、そういう不安がつきまとうものでしょ。そういう選手ではありたくないよね。そういう奴、実際いるしさ」

Friday, July 13, 2007

<イチロー>マリナーズと5年契約 年俸総額約109億

2007年7月14日 (土) 10:51 毎日新聞

米大リーグ、シアトル・マリナーズは13日、イチロー外野手(33)=本名・鈴木一朗=と5年契約を結んだと発表した。AP通信によると、年俸総額は9000万ドル(約109億8000万円)で、総額、年平均ともに日本選手史上最高となった。今季が4年総額4400万ドルの契約最終年にあたり、去就が日米で大きな関心を集めてきた。
 イチローの1年平均の年俸は1800万ドル(約21億9000万円)となり、これまでの日本人選手最高だった松井秀喜外野手(ヤンキース)の1300万ドル(約15億8000万円)を抜いた。大リーグの今季最高年俸はアレックス・ロドリゲス内野手(ヤンキース)の2771万ドル(約33億8000万円)。
 イチローはメジャー1年目の01年に首位打者を獲得。04年には大リーグシーズン最多の262安打を記録。7年連続出場を果たした今年のオールスター戦では、日本人初のMVPに輝いた。
 ◇イチローの「革命性」、改めて浮き彫りに
 イチローが5年総額9000万ドル(約109億8000万円)でマリナーズに残留することが13日、決まった。破格の待遇は、球団経営におけるイチローの重要性を示すとともに、メジャーの常識をことごとく覆してきたイチロー独自の存在価値を、金銭面で裏付ける形となった。
 「マリナーズは、いしずえを失わずにすんだ」。AP通信は、イチローのマリナーズ残留をそう表現した。1年平均の年俸1800万ドルは、AP通信が4月に報じた今季の選手年俸ランクに当てはめると、ロドリゲス、ジアンビ、ジーターのヤンキース勢に続く額。マリナーズの経営にかかわる任天堂グループは、それに見合う看板選手という位置づけをしたとみられる。
 さらに5年という長期契約について、マリナーズのバベシ・ゼネラルマネジャーは「我々の目標はイチローに生涯シアトルでプレーしてもらうこと。今回の契約はそれに向けた大きなステップとなった」と語った。FA制の導入以後、一つのチームに生涯とどまることはまれになっているが、イチローが39歳になる2012年までの契約を結んだことで、その可能性は高まった。
 ロドリゲスに代表されるように高額年俸は長距離打者が多いが、イチローはリードオフマンとして破格の待遇を受ける。04年にシーズン最多の262安打をマークし、今年の球宴では史上初のランニング・ホームラン。メジャー1年目から、スピードと卓越した技術で、パワー全盛だったメジャーに衝撃を与え続けてきたイチローの「革命性」が、改めて浮き彫りになった。

残ってくれ、来年も」の声が重かった イチローの一問一答

イチロー外野手が、シアトル・マリナーズと2012年まで正式に契約を延長した。以下は、当地で行われた記者会見の内容。

——いつ決めたのか?
「いつという、この日はないんですけども、このシーズンが始まって、いろんな遠征にいくわけですけど、その時に、アウエーのファンがビジターの僕に対して、『来年は、うちのチームに来てくれ』と、言ってくれたんですね。正直、心が動いた時期もありました。日本のファンからは、日本に戻ってきてくれと、たくさん聞きました。でも最終的には、遠征から帰ってきて、『シアトルに残ってくれ、来年も』というその声が、僕にとっては一番重かった。これが一番の理由だと思います」

——マリナーズで引退を考えているか?
「ひとつのチームでプレーするということは、なかなかたくさんのプレーヤーができるわけではないと思うんですね。その可能性、チャンスを与えてくれたことに、感謝していますし、向こう5年半、思いっきりやって、5年契約の後の10年(契約)を勝ち取りたいと思ってます」

——契約問題の煩わしさが消えたか?
「キャンプの初日に、フリーエージェントに関しては、今日だけにしてくれと言ってきたんですけども、そのことが7月に入ってから、またちょっと騒がしくなってきて、これがすべて終わったと思うと、契約したことと同じくらい、うれしいですね」

——誰が一番影響を与えたか?
「一弓ですね」

——なんて?
「ワンワンワン言ってた」

——チームの方向性については?
「今の状況というのは、(優勝を)十分考えられる。僕たちのポテンシャルを考えれば、十分考えられる成績ですし、この2、3年、苦労してきたチームが、ようやく実り始めた、というふうに感じています。この5年というのは、十分に可能性のあるチームで居続けることができると、僕は思ってます」

——チームメートなど、周りの人がどんな影響を与えたか?
「チームメートに、自分が考えている野球に対する考え方とか物事に対する価値観が全く伝わらないというのはつらいものですが、幸いにしてこのチームには、何人かその価値観を共有できる人たちがいるので、そのことは確かに僕にとって大きな助けになった」

——5年後がイメージできる?
「パフォーマンスに関してはもちろん、その自信がありますし、見た目もこのままでいたい。急にアロハシャツとか着出したら、ちょっと、ここに染まった証になりますから、それは避けたい。まあ、DH(指名打者)にはなりたくない」

——トニー・グウィン、カル・リプケン(いずれも、ひとつの球団でキャリアをまっとうし、今年野球殿堂入りする名プレーヤー)らをどう考えているか?
「そういう選手の方が、少ないですからね、アメリカでは。日本だと、外に出ることの方が難しい、というか、珍しいことですよね。ここでは全く逆なんで、茶髪の増えた中で、黒髪がすごくきれいに見えたり、すごくかっこよく見える」

——評価について、どう考えているか?
「ひとりの選手に対して、これだけの評価を与えてくることは、それを示している。この評価って、年俸が500万円だとしたら、弥生時代からプレーしないと、達成できない数字なので、その評価ってすごいと思うんですよ。1000万でも、多分平安時代ぐらいですから、このことが、僕にとっては、個人としてはね、気持ちを表してくれた。チームの意識も、勝っていくことによって変わってきている。動きも変わってきている。このことを実感できたことが大きかった」

——自分で選ぶ体験というのは?
「想像通りでしたね。流れに任す方が、よっぽど楽だなあと想像してましたし、その通りだった。力のいることだった。ただまあ、そういう選べる立場にいることは、選手として、すごく幸せなことなんで、そうやって、6年半、自分をプレーヤーとして高めてこられたことには満足してます」

——苦しさは?
「遠征先のベットに入ったときにも、考えることってあるんですよ。この街に来たらどうなるかとか。それは、できればない方がいいですから」

Sunday, January 14, 2007

(2007年1月11日06時01分 スポーツ報知)

イチロー自身も今年、大きな節目を迎える。マリナーズとの4年契約の最終年。新人から7年連続200安打の金字塔も控えている。「(200安打の直前は毎年)想像を超えた緊張感に襲われて、体が動けなくなる。そういう切迫した状況になったときに、技術でカバーできる自分でいたい」と、精神面を超越するテクニックを身につける目標を立てた。